工場が生産目標を達成できない7つの原因と診断法

Stagnation Slaughters. Strategy Saves. Speed Scales.

工場の成績不振は、人手不足や設備や需要が原因であることはほとんどありません。この三つが最初に名指しされるのは、建屋の中で最も見えやすいからにすぎません。損失を実際に生み出している四つは、ラインより一段上の階層にあります。可視化の遅れ、責任の分散、意思決定の遅れ、そして製品構成の負荷です。この四つを切り分ける検証は、一週間の記録で足ります。

目次

要約

  • 見えやすい三つの原因は人手不足、設備、需要です。目に入るという理由で最初に挙げられますが、相当な割合で正解になるのはこのうち需要だけです。
  • 人手不足は最も多く名指しされ、最も当たらない原因です。判定基準は、症状が平坦か変動しているかです。変動は原因ではなく反応を意味します。
  • 設備は自前の記録を伴います。計画外停止の12か月分を設備別に並べれば、機械の問題なのか設備投資の判断プロセスの問題なのかが分かります。
  • 需要には最も厳しい検証が要ります。受注を取り逃しているのか、取った受注に負けているのかを見極めます。
  • 真の四原因は可視化の遅れ、責任の分散、意思決定の遅れ、製品構成の負荷です。どれもライン別の報告書には現れません。
  • 一週間で実行する施策は、最も成績の悪いラインを出ていく意思決定をすべて記録することです。何を尋ね、誰に渡り、いつ戻ったかを残します。

日本の製造現場という前提

日本の製造業は、現場改善の方法論が生まれ育った場所そのものです。したがって読み手は、外から持ち込まれた枠組みを非常に高い内部基準に照らして評価します。以下に述べる七つの原因は、新しい改善手法の提案ではありません。既存の改善活動が効かない工場で、改善の対象が最初から取り違えられている箇所を特定するための診断です。

工場が目標を外したときの定石は、最も成績の悪いラインで真因分析を回すことです。なぜなぜ分析、特性要因図、部門横断チーム、二週間の会議。こうした場に何度も立ち会ってきましたが、行き着く先はたいてい同じです。機械か、材料か、人か。つまり最初に目に入るものに行き着きます。手法がそれを見つけるように作られているからです。

問題は、目に見えるものが下流にあるという点です。工場の成績が落ちるのは、機械が不安定だからではありません。その機械が不安定だという事実が権限を持つ人間に届くまでに9日かかり、その間に生産計画が損失を吸収し、恒久化してしまったからです。ラインで回す真因分析はラインの原因を見つけます。効いてくる原因はラインより一段上の階層にあり、そこに対して特性要因図を開く人はいません。

以下は、その代わりに使っている分類です。七つの原因を、問題に見える三つと、実際に問題である四つに分けています。再建の全工程を進めている場合、この診断は工場再建の進め方の第一段階の中に位置します。まずこれを読み、それから数えに行ってください。

原因1 人手不足、ほとんど原因ではないもの

人手不足は、工場の成績不振の原因として最も頻繁に名指しされ、最も頻繁に外れます。最初に挙げられるのは、建屋の中で最も見えやすい変数であり、かつ動くからです。離職率が上がった、欠勤率が上がった、新人が一人前になるまでの時間が延びた、熟練オペレーターが同じ18か月のうちに全員定年を迎えた。これらの観察はたいてい事実です。しかしそのどれも、単独で利益率の差を説明しません。

確認するのは、人手の症状が安定しているのか、それとも別の何かに追随しているのかです。人手が本当に制約だった工場では、パターンは平坦でした。シフトを組めない、それだけの話で、出来高はその場にいる人数で頭打ちになります。これは実在する解ける問題であり、賃金とシフト編成と育成期間で解きます。この記事に書かれていることでは解きません。

はるかに多いのは、人手の症状が変動している場合です。変動しているということは、それが原因ではなく反応だということです。休日出勤を続けた後に欠勤率が上がります。休日出勤があるのは生産計画が遅れたからです。生産計画が遅れたのは、段取り替えについての判断が一週間放置されたからです。二段階か三段階さかのぼれば、毎回、原因4から原因7のどこかに着地します。

現場での検証は単純です。最も成績の悪いラインのオペレーター3名に、明日もっと多く作れるとしたら何があればよいかを聞いてください。3名が自分自身について語るなら、人手が本当の原因である可能性があります。3名とも、すでに誰かに伝えてあることを語るなら、それは人手不足の衣をまとった意思決定の遅れであり、採用をいくら進めても届きません。

原因2 設備、保全記録を持つ症状

設備は二番目に多く名指しされる原因であり、見えやすい三つの中では珍しく、自前の記録を伴います。計画外停止は記録されます。保全作業は記録されます。部品の消費も記録されます。つまり人手とは違い、設備は議論するのではなく検証できます。そして検証すると、たいていは機械よりも興味深いものが出てきます。記録は、機械の問題なのか設備投資の判断プロセスの問題なのかを教えてくれます。

計画外停止の12か月分を抜き出し、設備別に並べてください。本当に設備の問題を抱えている工場では、分布は広く出ます。多数の設備が、いずれも老朽化し、いずれも年数と稼働条件に見合った頻度で止まります。その工場に必要なのは投資と保全戦略であり、運用面の変更はそのどちらの代わりにもなりません。

成績不振の工場の大半では、分布は広くありません。二台か三台の設備が停止時間の大半を生み、しかもその設備は二回か三回の予算サイクルにわたって設備投資の申請リストに載り続けています。この時点で原因は設備ではありません。原因は、制約を律している機械とそうでない機械を区別できない設備投資の判断プロセスであり、そのプロセスは現場ではなく事務所にあります。

二つ目の確認は、計画保全と突発保全の工数比です。突発保全が優勢なら、保全機能は対応待ちの行列に変質しています。理由はほぼ常に同じで、計画保全の枠が生産計画に譲り渡され続けているからです。それは誰かが繰り返し下している判断です。設備の事実ではありません。

原因3 需要、ときに本当に原因であるもの

需要は、見えやすい三つの中で唯一、相当な割合で本当に正解になる原因です。だからこそ最も厳しい検証が要ります。数量が落ち、工場は設計能力の60%で回り、一台あたりが負う固定費の割合が増えます。これは実在する具体的な問題であり、具体的な対処の組み合わせがあります。そしてそのどれも、実行力の問題への対処とは似ていません。

数量が落ち、工場は設計能力の60%で回り、一台あたりが負う固定費の割合が増える。これに対する答えは、実行力の問題への答えとは似ていません。

両者を切り分ける検証は、受注を取り逃しているのか、取った受注に負けているのかという問いです。受注を取り逃している工場は、見積りを出して勝てていません。診断は価格、納期、ポジションへ移ります。取った受注に負けている工場は、仕事を取ったうえで形にできていません。受注残はあり、納期遅延のリストは長く、制約は建屋の中にあります。

高くつくのは対処のほうです。需要の問題にコスト削減を当てると、事業は恒久的に縮みます。回復期に応えたはずの能力を削ぎ、しかも需要が戻る速度より速く削ぐからです。有能な経営者が最善の意図でこれをやるのを見てきました。その後に現れる兆候は、二度と超えられない数量のところで黒字になっている工場です。この分岐は重要なので、別の記事にしてあります。コストの問題か需要の問題かをご覧ください。

現場からもう一点。受注を取り逃している場合、失注が全体に均等に広がっているのか、特定の製品群に固まっているのかを確認してください。固まっている失注は一つのセグメントにおけるポジションの問題であり、範囲が狭く手が打てます。全製品にわたって均等な失注は価格か納期の問題であり、範囲が広く時間がかかります。

原因4 可視化の遅れ

可視化の遅れとは、何かが起きた時点と、それに対して動ける人間がそれを知る時点との間隔です。成績不振を実際に生む四つの原因の一つ目にあたります。どの報告書にも現れません。報告書はこの原因の症状であって、尺度ではないからです。

仕組みは文化ではなく算術です。あるシフトが、稼働の最初の2時間で1時間を失います。数えるのはシフト終了後です。その数字は翌朝入力され、週次に集計され、翌週の火曜に確認されます。判断できる人間がその数字を見るまでに9日が過ぎ、その間に同じ流れで3シフトが回り、1時間だった損失は9時間になって生産計画に吸収され、通常能力として織り込まれています。

シフト序盤に失った1時間は、9時間になって生産計画に吸収されます。判断できる人間がその数字を見るまでに9日が過ぎるからです。

この原因がこれほど長く生き延びるのは、どこにも失敗らしい姿がないからです。全員が自分の仕事をしています。数字は正確でした。報告書は期限内に出ました。確認の会議は予定どおり開かれました。損失は構造的なもので、誰かの働きぶりではなく測定の頻度が生んでいます。そしてこの損失は、その上に載せるあらゆる改善活動を生き延びます。

診断は、役割ごとに測定の頻度と意思決定の頻度を突き合わせることです。職長は1時間ごとに資源配分の判断をします。その判断材料が1日1回しか届かないなら、情報を持って下す判断1回につき12回を手探りで下しています。これを直した工場は、頻度を変えただけで2週間以内に数字が動きます。元の問題がラインになかったことの、最も明快な証拠です。

原因5 責任の分散

責任の分散とは、一つの数字に責任者が三人いる状態、つまり機能的には誰も責任者がいない状態です。七つの中で最も静かで、会議の場で最も名指ししにくい原因です。関わる一人ひとりが自分の持ち場で懸命に働いており、しかもそれを証明できるからです。

パターンは見分けがつきます。納期遵守率を製造と生産管理と営業事務が分け合って持っています。未達になると、製造は計画変更を指し、生産管理は能力の約束を指し、営業事務は自分が決めたのではなく渡された回答納期を指します。三者の説明はいずれも正確です。数字は動かず、これからも動きません。改善するには、ある部門の都合を別の部門の都合と取引できる権限を持つ人間が必要で、その人間はその場にいないからです。

確認するのは、一つの数字に名前が一つだけ結びついているか、そしてその名前が入力条件を変える権限を持っているかです。権限のない担当は責任ではなく、ただの矢面です。責任者ではなく矢面に立たされた人は、数字を動かすためではなく自分を守る記録を作るためにエネルギーを使います。

これと対になる失敗が、高度の合わない指標です。工場長が持つ工場全体の納期遵守率は、行動に移せません。故障モードがまったく異なる製品群を足し合わせているからです。製品群ごとに分け、その製品群の生産計画を握っている人に一つずつ紐づけてください。ぼやけていた問題が、三人の担当を伴う三つの具体的な問題に分解されます。

原因6 意思決定の遅れ

意思決定の遅れとは、問いが現場を出てから答えが戻るまでの時間の中央値です。これまでに見つけた中で、工場の成績を最も確実に予測する指標です。同時に製造業で最も測られていない数字でもあります。他のほぼすべてを小数点以下4桁まで測る産業にあって、これは奇妙な事実です。

この仕組みは、他の原因にはない形で積み上がります。答えを待っている職長は手を止めません。迂回します。そして迂回には代償があります。余分な段取り替え、中途半端なロット、順序を外した製造、特急手配の部品。迂回の一つひとつは個別には合理的で、合計すると高くつきます。どれも差異としてはどこにも現れないため、遅い意思決定層の総コストが一つの数字にまとめられて誰かの目に入ることは、ついに起きません。

稟議や根回しを通じて合意を形成する組織では、この待ち時間は文化の問題として扱われがちです。ここで測っているのは文化ではありません。合意形成をやめるという話でもありません。合意形成にかかる時間を誰も数字にしていない、という話です。

二次的な影響のほうが深刻です。職長は、観測した返答時間に合わせて自分を較正します。エスカレーションに確実に9日かかるとなれば、上げるのをやめて自分で吸収し始めます。その時点で工場は早期警戒の仕組みを丸ごと失います。以降、事業責任者に届く報告は静かになり楽観的になっていきますが、実際の成績は劣化していきます。安定に見えるという点で、これは特異で危険な状態です。

測るには一週間かかります。現場を出ていく意思決定をすべて記録してください。何を尋ね、誰に渡り、いつ戻ったか。出てくる中央値には驚くはずです。そして宛先が一人か二人に集中していることも分かります。十年かけて承認権限を積み上げ、誰も意図しないまま、いまや工場の実質的な制約になっている人たちです。

原因7 製品構成の負荷

製品構成の負荷(ポートフォリオ・ドラッグ)とは、その工場が作るべきでないものを作り続けたことで積み上がったコストです。金額の重みは七つの中で最も大きく、診断上の見えやすさは最も小さい原因です。隠れるのは、複雑性のコストが間接費の中に入り、間接費が全製品に均等配賦されるからです。その結果、標準原価は、どの製品も隣の製品とだいたい同じくらい儲かっていると報告します。

配賦されないコストは、数量ではなく製品ごとに変動するコストです。段取り替えの時間、治工具の維持、少量生産品のために持たされる在庫、それが生む需要予測の誤差、要求される文書、そして吸い取っていく設計と顧客対応の工数。これらを粗い見積りでも割り付ければ、収益性の分布は形そのものが変わります。なだらかな傾斜ではなくなり、長い負のすそを引いた崖になります。

現場に出る症状は、忙しそうに見えて利益率が低い工場です。段取り替えが生産計画を占め、制約は作るのではなく切り替えているために稼働率が低く、生産管理は一週間を順序の組み直しに費やし、建屋の中の全員が「うちは一生懸命やっている」と言えます。実際そのとおりです。間違った製品構成に対して一生懸命やっているのであり、実行力をいくら磨いても製品構成の問題は直りません。

本格的な原価計算に入る前の簡易診断はこうです。数量の下位1割を占める製品群を数え、次にその製品群が全段取り替えのうちどれだけを消費しているかを数えてください。数量のわずかな割合が制約の使える時間の大きな割合を食っているなら、原因は製品構成の負荷です。そして七つの中で、直したときの見返りが最も大きい原因でもあります。

月曜の朝から一週間、最も成績の悪いラインを出ていく意思決定をすべて記録してください。ほかには何もしなくて構いません。その記録だけで、七つのどれを相手にしているのかが分かります。

Stagnation Assassin について

Todd Hagopian は Fortune 500 企業の変革を担ってきた経営幹部であり、バークシャー・ハサウェイ、イリノイ・ツール・ワークス、ワールプール、JBT Marel において4600億円(30億ドル)を超える株主価値を生み出してきました。現在は JBT Marel で Global VP of Product Strategy and Marketing を務めています。The Stagnation Assassin(停滞の暗殺者)として知られ、2冊の著書があります。The Unfair Advantage: Weaponizing the Hypomanic Toolbox と Stagnation Assassin: The Anti-Consultant Manifesto です。ブログは15以上の言語で公開され、世界中の実務者に読まれています。講演の依頼は講演ページから、連絡は LinkedIn からお願いします。

まず自分で答えていただきたい問いが一つあります。最も成績の悪いラインで起きた問題が、それを直す権限を持つ人間に届くまでに何日かかっていますか。数字で答えられないなら、それが原因です。数字が出て、それをどう使うかを知りたくなったら、その数字を教えてください。

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